農業経営の会計・経理の特殊性

農業経営における会計・経理と、一般的な会計・経理の違いは以下の点にあります。

◆特殊な勘定項目
農業経理における専用の勘定項目として、以下のものがあります。

・種苗費：種子や苗などの購入にかかった費用
・素畜費：育成牛や子豚の購入にかかった費用
・肥料費：肥料の費用
・飼料費：飼料や飼料添加物の費用
・自給飼料費：生産・収穫した穀類で米以外のものの費用
・農具費：ホーズ・小農器具（取得額が10万円未満の農機具）など農作業に使用する農具にかかった費用
・農薬衛生費：農薬、家畜薬、共同防除経費、獣医の治療代等
・動力光熱費：農業機械のために必要な軽油やガソリンなどにかかった費用
・諸材料費：農畜産物の精算に必要な敷地料やビニールなどの消耗資材費用
・修繕費：農業機械、車両、作業場、倉庫、畜舎などの修理・ビニールの張替えにかかる費用
・作業用衣料費：農作業用衣料、長靴などの購入費
・農業共済掛金：水稲、家畜、温室などの共済掛金、農業資産に対する火災保険料、車両の保険料など
・減価償却費：農用建物、建築物、機械、車両、成牛などの固定資産の減価償却費（詳しくは「確定申告における減価償却制度」）
・荷造運賃手数料：生産物の販売のために使用した袋、箱などの購入費、販売にかかった手数料、農業手数料、運送費、検査料、仲介料、紹介料など
・雇人費：農業の生産や販売のために労働者を雇用したときの労働者に支払われる報酬
・貸借料：ライスセンター、トラクターなどの使用料や貸借料、家賃など
・地代：農地への貸借料
・小作料：小作地の使用料金
・土地改良費：水田や畑などの区画整理など土地改良にかかった負担金額

◆棚卸の方法
棚卸とは、手元に残っている資産や在庫の中身を確認して、金額として計算して帳簿付けを行う作業をいいます。
一般に棚卸においては、「商品」という勘定項目を利用します。
これに対して農業では、在庫の種類が多岐にわたるため、種類分けして棚卸を行う必要があります。勘定項目は以下の通りです。

農作物：収穫済みの農作物で未販売のもの
仕掛品：栽培中で、未収穫の農作物や、販売に熟していない動物
原材料：種子・肥料・飼料・農薬
貯蔵品：燃料・包装に必要な物・収入印紙

◆生物資産について
成熟した果樹・牛・豚等の、生産活動を行っている状態の果樹・家畜は勘定項目上「生物」に固定資産として減価償却されます。
成熟するまでにかかった費用は、同固定資産の取得金額として計上されます。
この会計処理のためには、毎会計年度末に育成期間中にかかった費用を「育成仮勘定」という勘定項目に振り替える処理が必要となります。
そして、生産活動を始めた成熟した果樹・家畜に関しては、「育成仮勘定」から「生物」へと切り替え、固定資産として、減価償却されます。

◆確定申告の書式
農家が確定申告に用いる書類は、農業専用の書類様式を備えています。

以上のように農業経営にかかる会計・経理では一般の会計・経理と異なる点が多くあります。
これらを網羅的に遵守するためには、専門家に相談することが好ましい場合もあります。

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